はじめまして。今回よりこのColumnを担当することになりました深澤です。詳しくは、Profileをご覧いただけるとありがたいですが、私は長年、広告クリエイティブやマーケティング・プランに携わり、コンセプトや広告表現などの立案の必要性から、時代の潮流や人々の関心の行方などを自分なりに研究してきました。それが買われ、企業グループのイメージ構築プロジェクトなどにも参加し、現在でも雑誌などで、いわゆるトレンドを読み解くコラムを連載しています。これまでは、ビジネスのネタになるように、解読した結果を伝えることを主として来ましたが、このColumnにおいては、少し視点を変えて解読の過程、つまり私の手法の一端もご披露し、皆さんご自身で動向を捉え、それぞれの分野で活用できるようなヒントになればと思っています。ぜひ、お付き合いいただけますよう、お願いいたします。
さて、ここのところ急に「コンテクスト」という言葉が、目立ちます。とくに、インターネットの検索連動型広告に関連して、目にするようになりました。グーグルやヤフーでキーワードを入力すると、調べたい項目と一緒に関連した広告が表示されるあれです。そもそも、「コンテクスト」とは、文脈のこと。よって、関連性や流れのあるものを「コンテクスト」と呼んでいるようです。あるキーワードを入力した人は、当然関連した商品などにも関心が高いだろうから、その流れ=文脈にそった広告を提示しようというわけです。
ところが、本来「コンテクスト」は、インターネット広告だけに収まるようなものではありません。例えば、老舗ブランドは、「コンテクスト」の最たるものといえます。その成立ちや素材・品質、有名人の顧客など、歴史や逸話全体のコンテクストがブランドなのです。
一方「コンテクスト」に対応する言葉に、「コンテンツ」があります。文脈を成り立たせる単語のひとつひとつが、「コンテンツ」。ブランドを「コンテクスト」とすると、その商品が「コンテンツ」となります。かつて海外の有名ブランド品がまだ珍しかった頃、その商品をデパートの売場に並べるだけで、集客できました。しかし、ミラノやパリに気軽に旅行に行けるようになった今では、「コンテンツ」としての商品だけでは、ありがたさが無くなってしまいました。そこで、本場と同じ雰囲気やサービスを提供する、日本における本店ビルが表参道や銀座などに進出するようになったのです。今人々は、「コンテクスト」ごと消費することを求めています。
同じことが、動物園でも見ることができます。これまでは、動物たちは一律の檻に入れられて、まるでデパートの売場のように一様に展示されていました。ゾウやキリンが珍しい時代ならいざ知らず、これでは飽きられてしまうのは当然です。そこで、他園にはいないパンダなどの珍獣・奇獣、つまり「コンテンツ」の珍しさで対応しようとしましたが、これも限界があります。そんな中、旭山動物園は、行動展示として動物たちの食餌や生態など彼らの生きる環境=文脈、「コンテクスト」ごと見せることで集客に成功しました。
さて、時代の流れが「コンテクスト」に向いているのが、なんとなく分かっていただけたでしょうか。そこで「コンテクスト」に即して、私が潮流を見る上で大切にしている二つのポイントをあげます。ひとつは、私たち自身が何よりも「コンテクスト」であること。もちろん、終始一貫したものではないはずです。生きてきた中で、様々に枝分かれした支流もたくさんあることでしょう。でも、人生で培ってきた経験や価値観を大きなコンテクストとして、その支流をアンテナとして広げることで、大きな収穫を得られます。もうひとつは、アンテナにかかった兆しや暗示など気になったものを、「コンテクスト」としてつなげてみること。「コンテンツ」のまま、あれが面白い、これが流行っていると放っておかずに、できるだけそれぞれをつなぐような「コンテクスト」を見つけることです。そうすれば、自ずと時代の流れが見えてくるはずです。
※広告やマーケティングにおける「コンテクスト」に関してより詳しくは、月刊『販売革新』(鰹、業界)に連載中の拙著コラム「マーケティングのものさし」11月号をご参照ください。 |

(株)メディアボックス プランニング室
チーフプランニングディレクター
深澤 徳
1957年東京生まれ。1979年慶應義塾大学経済学部卒業、同年I &S BBDO(当時第一広告社)入社。広告クリエイターとしてキッコーマン、明治製菓、マツダなどのCMを制作(ACCほか広告賞多数受賞)。1987年から10年間に渡って、セゾングループの文化・CI戦略プロジェクトへブレーンとして参画。その後マーケティング・プランナー、コンセプターを担当。その間『消費の見えざる手』『In-Site』といった時代分析等の出版物の企画・執筆も行う。2000年にI &Sを退職後、潟激塔Rーポレーションを設立。チェコのアニメを主とした映像配給事業を手がけ、そのほか舞台公演など文化事業の企画や批評活動に携わる一方、NPO法人リアルシティーズの理事としてカルチャー情報サイト「REAL TOKYO」のサポート、寄稿を行う。2005年にレンコーポレーション退任後、現在は東京テアトルグループの広告会社である潟<fィアボックスに在籍、メジャー配給映画の宣伝・プロモーションを中心としたプランニングを行っている。
鰹、業界より刊行されている月刊『販売革新』に、時代潮流を解読するコラム「マーケティングのものさし」を連載中。
また写真やカルチャーなど私的関心を綴ったブログも公開中。
http://wander-dist.cocolog-nifty.com/
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