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それいゆコラム
コラム 深澤徳氏 「自分流で時流を読もう」
第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 最終回  

第5回 「水平ネットワーク」の可能性

 前回までは、コンテクストとコンテンツ、推論の立て方など、時流を読み解く上で、私が必要と感じていることの大半を述べてきました。しかし実はもうひとつ、おそらく一番大切なものがあります。何かといえば、それは人。<それいゆ>の会員の皆さんなら、今更そんなことを言われなくても、人脈の重要性ぐらい充分過ぎるぐらい承知されていることでしょう。ビジネスの様々な場面で、キーマンなどとのコネクションほど役に立つことはありません。そしてこれは、時流に関連した情報収集でも同様です。実際、雑誌や新聞などのメディアからよりも、人から得た情報の方が役立つことも多いのです。雑誌や新聞などは、どうしても二次的なものゆえ新鮮さが落ちますし、自身で拾い集めて歩くのにも限界があります。今はネットで、最新情報を知ることもできますが、玉石混交で信憑性に欠けるのも事実。最近もアメリカの大学で、ウィキペディアをそのまま信用したために、答案が不正解になってしまった学生が続出したそうです。

 そんなとき頼りになるのが、何よりも人のネットワーク。しかも、自分の得意とする分野以外のネットワークです。通常のビジネスでは、業務上の関わりが重要視されるでしょう。しかし、時代を読むなどの広い視野が要請される場面においては、当然ながら業務外の多様な人脈が必要になります。関連した興味深い研究では、米国のあるハイテク企業で3300人の管理職のネットワークを調べたところ、ネットワークと昇進速度には、密接な関係があることが判りました。下級管理職の昇進には業務指向の縦型のコネが有利に働き、上級から経営クラスの昇進には、業務外の多様でフラットな横のパーソナル・ネットワークが効果的とのこと。つまり当然のことながら、上位の役職ほど広い視野や情報が求められるということでしょう。

 私自身、さしたる出世をしているわけではないので、偉そうなことはいえませんが、それでも以前事業を立ち上げたときなどには、様々な人脈に助けられました。もちろん今でも、公私にわたってお世話になることが少なくありません。そこで今回は、私のネットワークの中から、いつも刺激になってくれている二人を紹介したいと思います。

 伊藤剛さんと伊勢華子さんは、二人ともASOBOTという会社を運営しています。会社といっても堅苦しい組織ではなく、プロデューサー、編集者、ライター、といった人たちによる開かれたもの。というと、今ではさほど珍しくないクリエイター集団に聞こえますが、その内容がちょっと違います。

左:伊藤剛さん 右:伊勢華子さん
(左:伊藤剛さん 右:伊勢華子さん)
 例えば、伊勢さんが手がけた、『「たからもの」って何ですか』(著・編:伊勢華子 パロル舎)は、彼女が画用紙と24色のペンを手に世界をめぐり、出逢った119人の子どもに描いてもらった“宝物”の絵とエッセイがつまった絵本です。 富める国から教育も充分に行き届かないような国まで、さまざまな環境で育つ子どもたちが描いた、自分にとって一番大切な“宝物”。家族や草花、貯金箱や人形など、やわらかで自由な“宝物”の数々は、いろいろなことを教えてくれ、考えさせてもくれます。この本は、NHKの「みんなの歌」になったり、教科書に取り上げられたりもしました。

 また、伊藤さんが中心となっているものに、『GENERATION TIMES(ジェネレーション タイムズ)』(publish:ラフォーレ原宿)の企画・編集があります。未来を担う若き世代と一緒に、これからの新しい時代のカタチを考えるジャーナル・タブロイド誌。共同発行者として提携するラフォーレ原宿の館内では無料配布、それ以外では、ネット上の『ASOBOT Shop』や、志を共有した書店などで有料販売(発行部数:4万部)しています。

『GENERATION TIMES』『「たからもの」って何ですか』ほか
(『GENERATION TIMES』
『「たからもの」って何ですか』ほか)
若い世代に、もっと社会や世界のことなどを知り、考えてもらいたいというその主旨、使命感には、いつも頭の下がる思いです。彼は、最近話題の「シブヤ大学」を手がけたり、私も応援している「nibroll」というパフォーマンス・グループのプロデュースもこなしたりしています。
  しかも、こうした社会に資する活動が、決してボランティアではなく、ビジネスに結実しているのも感心させられる点。もちろん、ブランド・カタログの編集やお店の内装といった、他の仕事も当然しています。けれど、それらも分離しているのではなく、社会的な仕事と有機的に連動していて、彼等を見ていると、これからのビジネスやネットワークのありかたを予感させられます。肩書きや立場の上下、業種、職種すべてを越境し、志を同じくするものがつながることで、次々とプロジェクトが生まれてゆく。ヒエラルキーや縦型ではない、いわば水平ネットワークの可能性、重要性、そんな次代の人とのつながりを考えさせてくれます。
ASOBOTのURL:http://www.asobot.co.jp/

深澤徳氏

(株)メディアボックス プランニング室
チーフプランニングディレクター
深澤 徳

1957年東京生まれ。1979年慶應義塾大学経済学部卒業、同年I &S BBDO(当時第一広告社)入社。広告クリエイターとしてキッコーマン、明治製菓、マツダなどのCMを制作(ACCほか広告賞多数受賞)。1987年から10年間に渡って、セゾングループの文化・CI戦略プロジェクトへブレーンとして参画。その後マーケティング・プランナー、コンセプターを担当。その間『消費の見えざる手』『In-Site』といった時代分析等の出版物の企画・執筆も行う。2000年にI &Sを退職後、潟激塔Rーポレーションを設立。チェコのアニメを主とした映像配給事業を手がけ、そのほか舞台公演など文化事業の企画や批評活動に携わる一方、NPO法人リアルシティーズの理事としてカルチャー情報サイト「REAL TOKYO」のサポート、寄稿を行う。2005年にレンコーポレーション退任後、現在は東京テアトルグループの広告会社である潟<fィアボックスに在籍、メジャー配給映画の宣伝・プロモーションを中心としたプランニングを行っている。

鰹、業界より刊行されている月刊『販売革新』に、時代潮流を解読するコラム「マーケティングのものさし」を連載中。

また写真やカルチャーなど私的関心を綴ったブログも公開中。
http://wander-dist.cocolog-nifty.com/

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