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それいゆコラム
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第5回 月明かりとベルギーのクリスマス
オイスターバーの店頭にて。注文をしてからカキをむいてくれる。

釜から出されたばかりの熱々の骨付きリブロース肉にかぶりつく。口の中いっぱいに広がる肉汁を楽しみながら甘いシャンパンをひと口。レモンをかけた生牡蠣をするりと飲み込みながら、またシャンパンをひと口。…ああなんて贅沢!しかも、こんな楽しみを高級レストランではなく、吐く息が白くなるほど寒い屋外で味わえるなんて!

これは12月14日から18日までLeuvenで行われた、クリスマスマーケットでのひとコマ。図書館前の広場に屋外テントがはられ、クリスマスグッズやアクセサリー、石鹸、チョコレート、そしてレストランなど、いろいろな店がぎっしりと軒を連ねている。クリスマス前のなんだかうきうきした気分を味わえて、このマーケット、とても楽しい。

甘めのシャンパンと生カキの贅沢コンビ。

ここは屋台の立ち呑みオイスターバーで、シャンパンと生カキという贅沢極まりない組み合わせを、うれしくなるくらい手軽な値段で堪能することができる。生カキ一皿、グラスシャンパン一杯で、それぞれ3ユーロ(450円)ほど。
寒さで冷え切ったからだがシャンパンでじんわりあたたまってきた。ほんわかと幸せな気持ちに満たされる。ほろ酔い気分でふわふわと心地良い。
食事の後はやはりデザートを、ということでマーケットを歩いていると、行列のできているパンケーキ屋を見つけた。ゴウゴウと炎の上がる焼き釜に、どんどんパンケーキ生地がほうりこまれていく。それにしても屋外にこんな本格的な焼き釜を作ってしまうなんて…。

食を楽しもうとするこの情熱、何て素晴らしいんだろう!焼きたての熱々パンケーキにブラウンシュガーをたっぷりかけてくるりと巻いたものを、ハフハフいいながらほおばる。黒砂糖の優しい甘みが口の中いっぱいに広がって、なんだか昔、子供のときに綿飴をほおばりながらわくわくしながら縁日を歩いた日を思い出した。

最近の日本でのクリスマスは、11月の下旬からクリスマスディスプレイを街で見かけるようになり、年々早くそして華やかになっていくけれど、Leuvenのクリスマスは12月中旬からゆっくりと、静かに始まる。市庁舎前の広場には大きなクリスマスツリーが立てられ、街頭の木々には電飾が施される。街のシンボルである市庁舎もクリスマス仕様にライトアップされる。色はオレンジ色の電球色一色のみで、とてもシンプルだ。色とりどりの華やかな日本のクリスマスツリーに慣れきっていた私には、そのシンプルなクリスマスディスプレイはとても意外なものだった。
でもオレンジ色の明かりで包まれた街は、決して華美ではないけれど、美しさに満ちている。そう、月明かりの似合う美しさなのだ。かえって、がんばりすぎている装飾は、この街に似合わないのかもしれない。

月明かりと調和した美しいLeuvenの市庁舎広場を見ながら、「そぎ落とすことの美しさ」を感じていた。まわりに負けないようにどんどん何かを身につけていくばかりでなく、いさぎよく、自分にとって本当に大切なものだけひとつを選ぶ。そして不要なものをそぎ落としていく。そうしていくことで「本物の美しさ」といったものが身につくのかもしれないな。歴史と風格を感じさせるLeuvenの美しい街を見ながら、そんなことをぼんやりと感じていた。

月明かりに照らされた、Leuvenの市庁舎。 オレンジ色のライトアップがとてもきれい。
新しい2006年は私にとって30代後半のスタート。20代のときはあれもこれもと欲張っていたけれど、これからは大切なものひとつをいさぎよく選び抜ける「そぎ落とされた美しさ」の持てる大人の女性になろう。そんな静かな小さな誓いを持った、Leuvenでのクリスマスでした。

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