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| 新潟の豪農の屋敷を移築した建物。夜は趣もいっそう。 |
時には、パソコンのない時間を…。訪れるのは、北アルプスを望むこじんまりとした、静かな温泉地にある宿です。東京からの最短コースは、松本駅まで「あずさ号」に乗って、そこからバスで。片道5時間近くかかる行程です。日本列島の一番膨らんだところの真ん中辺りにあり、山々に囲まれた地だけに、関西からも、名古屋からもそこそこ時間が掛かります。この福地温泉の歴史は古く、平安時代、京都から都人も療養に訪れたそう。長い道のり、険しい山道を経ても訪れたい…と思わせるほど、この温泉には魅力があるのです。それは現代も変わりません。私も3回来ています。山に囲まれた温泉地は、道沿いに13軒の宿が点在し、畑や畦道など、日本の懐かしい原風景がほっと心を解します。時間が急にゆっくりと流れ、携帯電話もパソコンも忘れてしまいます。私が、この温泉地が好きなのは、ほどほどの秘境感にあります。全くの人里離れた山深い温泉地ではなく、そこに住む人たちの生活感も漂う、人の温もりが感じられる温泉地なのです。しかも、この土地らしい料理や温泉施設を提供する快適な宿が揃っているのにも好感を抱きます。温泉地の端から端まで歩いても10分くらい。浴衣で散策するには、ほどよい大きさです。賑やかな娯楽施設もなく、夜はひっそりとするのもいいですね。「ここにしかない!」という素朴なもてなしと静寂が、何よりのご馳走です。 |

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| 広々した宿の玄関には、打ち水がされ訪れる人を静かに待つ。 |
さて、ご紹介する〈湯元 長座〉は、福地温泉でも古くから続く宿。新潟の豪農の屋敷を移築した、まるで時代劇にも出て来そうなどっしりとした構えの建物が迎えます。太い梁や柱で組まれた館内。玄関脇の大きな囲炉裏など、今では珍しい空間が広がります。しかし、古民家風の造りは、近年ちょっとした宿のトレンド。人工的な古材やプリントの杉板などを使った古民家風のインテリア仕立ての宿も見られます。しかし、この宿の柱も梁も無垢の木材。床のフローリング(床板)もしっかりとした素材感にあふれます。本物だけが持つパワーが、宿全体を包みます。さまざまなタイプの部屋がありますが、宿泊するなら囲炉裏のある客室に泊まりたいもの。高い天井の広々した古民家の造りで、囲炉裏端に座るひとときは、のんびりと心も落着きます。ふと目を上がれば、四季折々の山野草が楽しめる庭が。造りこまない自然の風情がたっぷり。まるで山里の庵に過ごすような心地に。 |
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| 食事処の囲炉裏で焼く五平餅や季節の川魚。焼き立ての美味しさは絶品。 |
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| 香ばしい味噌の香りが食欲をそそるホウバ焼。信州や飛騨地方を代表する郷土料理。 |
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| 山菜の煮付けなどが並ぶ朝食。野菜や山菜の味の豊かさを実感する品々。 |
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宿の雰囲気と料理がマッチすること。それが心地よい宿の条件のひとつだと考えます。この宿の食事は、炭火で焼く川魚や五平餅、飛騨牛、ホウバ焼など囲炉裏を使った飛騨の郷土料理です。古民家の建物の趣に実にマッチした料理です。もし洒落た懐石料理だったら違和感を覚えるはず(実はマッチしている宿ばかりではないのが実情)。日頃、口にできないその土地だけの料理を頂くこと、それは大切な旅の楽しみ。近くの山には、春は山菜、秋はキノコなどが恵みとして登場します。その滋味あふれる旬の食材は、ここを訪れた人だけが味わえる特権。まさに都会では出会えない贅沢です。囲炉裏のある食事処でのんびり頂く料理の数々。焼き立ての川魚や五平餅の香ばしさは、格別。華やかな旅館料理とは違う素朴で飾らない味わいに心和みます。まさに古民家の宿の趣をいっそう高める料理です。 |

福地温泉は、多くの登山家に愛される温泉。山間に立ち上る湯煙が、豊富な湯量を物語ります。この宿は、「日本秘湯を守る会」会員の宿で、湯はもちろん源泉掛け流し。大きな丸太の梁と柱で組まれた大浴場とそれにつづく露天風呂の湯ぶねの大きさもたっぷりで、温泉を十二分に満喫できます。露天風呂では、北アルプスの壮麗な姿も眺めつつゆっくりと入浴。澄み切った冷ややかな山の空気が、温まった体に気持ちよく吹き渡ります。貸切り風呂もあり、ゆっくりと入浴できます。また福地温泉では、宿泊した宿以外に一ヶ所、ほかの宿の露天風呂に無料でもらい湯ができる「のくとまり手形」という嬉しいサービスも。宿泊する宿の浴衣を着て出掛けるのがキマリで、それも楽しみのひとつです。
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| 男女別の浴場には、大きな内風呂があり、豊富な湯が湯ぶねから流れる。 |
北アルプスを望む露天風呂は、早朝、夕暮れ時に訪れたい。 |
庭の自然が湯上りのひとときを和ませる。四季折々の自然の美しさが目に眩しい。 |
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朝食前に出掛けるのが、宿からすぐの朝市です。地元の新鮮な野菜や果物、漬物や餅などの食料品のほか、籠や草を編んだ座布団など、いろいろな品々が並び、お土産を調達するには最適な場所。私のおすすめは、野菜のほかに、飛騨牛を使ったレトルトのカレーや地元産のケチャップなど。思わず買い過ぎてしまう美味しそうなものばかりです。
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岐阜県奥飛騨温泉郷福地温泉
Tel: 0578−89−0099 全32室
料金: 2万1150円〜。(2名1室ひとり。2食付)
IN 14:00 OUT 10:30
詳しくは: http://www.cyouza.com/ |
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| 【小原誉子 プロフィール】 |
| 東京出身。お茶の水女子大学卒業。株式会社サンリオ販売促進部、オーストラリア放送協会ラジオオーストラリア放送記者、テレビマンユニオンプロデューサーなどを経て、株式会社シーホーク ジャパンを設立。旅をコンセプトに、雑誌などの企画、編集、ライター、エッセイストなどで活躍。心地よい宿、ホテルなどを目指しアドバイスも。さらに外国旅行者のための日本ガイドなどを企画中。温泉をベースにした日本独自のリゾートのあり方を探る。 |
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