視点が変われば、世界も変わる?!

はじめまして。今月からこのコラムを担当させていただくことになりました奥村知花です。
人はどんな時に、どんな本を選ぶのでしょう?「情報が欲しいから」「新しい世界に飛び込みたい」「魂を揺さぶられる程の感動を得たい」などなど。それらは種々多様です。1日に200冊も300冊も本が出版されている今日この頃、自分がどんな本を読むべきか? どんな本を読みたいか? 昨今では、そんな1冊を選ぶことさえ困難になっている気がします。そこで、ここでは読書旅行をテーマに書籍をご紹介したいと思います。「旅行」と言っても、いわゆる「旅」の本のご紹介ではありません。「政治」でも「経済」でも「社会情勢」でも、はたまた「オンナの生き方」にだって視点をちょっとだけ変えて覗いてみれば、書籍の誘う素晴らしい旅行が出来るのです。
そんな読書旅行を、皆さんとご一緒出来れば嬉しいと思い、このコラムを書きはじめることになりました。どうぞ、宜しくお付き合いください。
「アメリカがくしゃみをすれば、日本が風邪を引く」という言い回しがありますが、アメリカの影響は日本だけではなく、世界にも及ぼしているのが現実です。今、世界の金融市場を混乱させている低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題をきっかけに、米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のアラン・グリーンスパン氏へ注目が集まっています。アメリカ経済の指揮者として19年もの間FRB議長を務めた彼は、巧みな金融政策で、1990年代のアメリカに「インフレなき経済成長」という黄金時代をもたらした人物。“神様”とも“マエストロ(巨匠)”とも呼ばれ、退任後もその人気は衰えを見せません。しかし、グリーンスパンは、本当に“神様”と呼ばれるほど優れた金融政策手腕を持っていたのでしょうか? そんなことの問いかけとして一石投じるように、出版されたのが本書『グリーンスパンの正体』です。今では、アメリカでグリーンスパン氏の自著『波乱の時代』よりも売れている本の翻訳本。冒頭で挙げた通り、アメリカの経済事情如何によって世界の金融事情が左右される昨今、サブプライム問題に端を発する株安やドル安など、私たちにも決して無関係の出来事ではありません。経済をとりまく環境が混乱している今、私たちには過去を断裁するのではなく、より多くの情報を取り入れ、俯瞰しつつも未来を見据え、冷静な判断をすることが必要とされているのだと考えさせられます。著者は、アメリカ議会やFOMCの公式な発言録を細かく調査した上で、グリーンスパンの時流を読む目に対し、「無知で矛盾に満ちている」と断じているものの、決して主観的な考えを冗長に綴っているわけではありません。見方を少し変えただけで「マエストロ」でさえ「無能者」と評価が180度変わってしまうことに、あらためて驚きを覚える1冊です。
この本に端を発してか、今月8日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタヴューでグリーンスパン氏は「かつては私がしていないことで褒められ、今は私がしていないことで非難されている」「過去の決定に後悔はない」と語っていますが、はたして皆さんはどのように思われるのでしょうか?
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奥村 知花(おくむら ちか)
「本しゃべりすと」。1973年東京都生まれ。成城大学文芸学部卒。フリーランスで新刊書籍のPRに携わりながら、「もっと読書の愉しさを広めたい!」をテーマに、「本しゃべりすと」として活動中。『本しゃべりずむ』
http://www.honshabe.com/
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