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それいゆコラム
コラム 奥村知花氏 「読書旅行を、ご一緒に。」
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「真のグローバリズム」を考える-奥山清行-

『たった1冊の本が、新しい世界へと私たちを誘い、何処かへと連れて行く……。未だ見ぬ遠い意識の世界へ旅をしてみませんか?』

 海外旅行へ行くこともままならなかった頃から比べ、時代はどんどん加速して進み、私たちが行きたいと思ったら、いつでも自由に地球の裏側にだって行くことの出来る社会になっている。個人の世界が言葉を超え、国境を越えて、それに伴って地球という世界が小さくなりつつあるのだ。英語さえ話せれば良かった時代や他国に迎合するだけのグローバリズム化時代を顧みて、今もなお「真のグローバリズムとは何か?」を人々は探求しつづけているかのように思える。

 昨今では、グローバリズムについて書かれたビジネス書やマニュアル本が、書店に多く欄列されているが、個人的な好みをいえば、いわゆるマニュアル本や啓発本が苦手である。仕事柄、読んでおかなければならない書籍は別として、書店ではそういったコーナーをチラリと横目で見つつも素通りするのが常だ。ただ、そんな中、ひときわ目を惹く真っ赤な1冊に、手が伸びる……。

『人生を決めた15分 創造の1/10000』 『人生を決めた15分 創造の1/10000』
奥山 清行 著
2,625円(税込)
ランダムハウス講談社 刊

 「エンツォ」と聞いてピンと来る人は、かなりのクルマ好きではないだろうか。では、「フェラーリ」ではどうだろう。おそらく知らない人は居るまい。小さな子供だって知っている。「エンツォ・フェラーリ」とは、フェラーリの創業主の名前である。その創業主の名前を冠したフェラーリ社の限定車「エンツォ・フェラーリ」をデザインした人こそ、本書の著者 奥山清行である。

 先に感想を述べてしまうと、ただ単純に心底「嬉しかった」というのが本心だ。事実、このように素晴らしい人が日本人でいることに誇らしく感じ「日本もまだまだ捨てたもんじゃないな」と思ったからである。

 子供の頃から絵を描いたり工作をしたりするのが好きだった奥山清行は、武蔵野美術大学卒業後、単身アメリカへと渡り、引き続きデザインの勉強に励んだ。卒業後、ゼネラルモーターズ(米)へ入社。その後、ポルシェ(独)のチーフデザイナー、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの工業デザイン部長を経て、イタリア最大のカロッツェリア(自動車のデザインや製造を担う業者)ピニンファリーナ(伊)のデザイン・ディレクターに就任。そこで先に挙げたフェラーリの「エンツォ」やマセラティの「クアトロポルテ」など、ファン垂涎のカーデザインを担当した。2006年には拠点を出身地の山形に移して独立し、Ken Okuyama Designの代表となり、現在に至る。

 フェラーリを思わせるこの赤い表紙の帯には「奥山清行、世界流仕事術」とあり、パラパラとめくってみると、そこには愉しげな彼のデザイン画やスケッチが美しく彩り豊かに紹介されて、帯文句とのギャップに良い意味で驚かされる。最初の1ページを読み、このタイトルの「人生を決めた15分」の意味を知る時、奥山清行の視点と共に始まる読書旅行に期待が大きく膨らむのだ。

 GM、ポルシェ、フェラーリ……。彼へのニーズは、それこそ世界中にある。広い世界で華々しい成功をはたし、とどまる所を知らず活躍し続ける彼の現在の本拠地は、意外にも日本。しかも、出身地の山形にある。生活の半分以上は海外で、忙しく飛び回っておいでのようであるが、彼は本拠地で「日本のものづくりと日本人である自分のアイデンティティを模索していこうと思っている」のだそうだ。彼は山形という、地方の若干小さい枠から世界へ飛び出した。しかし、そのことこそが、かえって地方の枠を大きく広げて可能性を見いだしたのではないだろうか。

 それらの思考に行き着くまでの経験談や失敗談を多く紹介する本書は、奥山清行の自叙伝的哲学を心ゆくまで堪能できる1冊だ。もし自分の居る場所や世界が、とても窮屈に感じモヤモヤとしていたら、世界観をちょっと広げてみるのはどうだろう。この本が、その為に必要な手伝いをしてくれるだろう。

奥村知花氏

奥村 知花(おくむら ちか)

「本しゃべりすと」。1973年東京都生まれ。成城大学文芸学部卒。フリーランスで新刊書籍のPRに携わりながら、「もっと読書の愉しさを広めたい!」をテーマに、「本しゃべりすと」として活動中。『本しゃべりずむ』
http://www.honshabe.com/

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