第4回 レディースプランを利用したことはありますか?
ホテルが販売する商品の一つに、女性客を対象としたレディースプランがあります。ご存じのとおり、宿泊プラン、飲食プラン、エステプラン、日帰りプランなどさまざまな内容で発売されており、いまやレディースプランのないホテルを探すほうが難しいくらいです。
今回のHotel Handbookは、そのレディースプランを取り上げますが、内容や楽しみ方以上に私がお伝えしたいのは、その歴史なのです。
前回、札幌のホテル客室を紹介した中で、「レディースプランが登場したのはわずか十数年前」と書いたとおり、90年代前半はまだまだ認知度の低い商品でした。いまでは考えられないことですが、本当に十数年前は芽が出たばかりだったんですよ。
レディースプランの商品化と認知・浸透、そして現在に至るまでの変遷は、女性の社会進出が加速する流れとも重なって、なかなか感慨深いものがあるのです。
ここに一つの資料があります。私が前職、『週刊ホテルレストラン』(創刊40年の宿泊・飲食産業情報誌。オータパブリケイションズ刊)の記者時代に企画した特集「過渡期に入ったレディースプラン」(97年5月9日号)の記事です。少し抜き出してみましょう(以下、太字)。
<1978年リーガロイヤルホテル(大阪)は女性専用宿泊プラン「レディース・サマーヴィラ」を発売した。価格は2人で2万1000円。プールとラウンジのカバーチャージとワンドリンク付きの内容で、期間は7〜8月の2か月間。夏季の閑散期対策の一環というのが本音だが、『女性の消費力が伸び始めた時期でもあり、これからは女性がリードする時代になる、との思いもあった』(同ホテル)>
そう、レディースプランは約30年前に大阪で生まれていました。しかし全国的に広まるのはまだ先のことです。
<火がついたのは、93年11月に販売開始された帝国ホテル(東京)の「レディーズ・フライデー」から、と言っていいだろう。そもそも「稼働率が最も落ちる金曜日の集客対策」だったが、97年8月には延べ5万人を達成するお化けプランに成長した>
当時のシティホテルは、法人客(しかも多くは男性)でもっていたようなものですから、ビジネス客が減少する週末や夏休みに稼働が落ちることがホテルの悩みの種でした。しかし、だからといって、「女性限定」のプランを出していいものか、多くのホテルが躊躇していた向きがあります。
ところが、「あの帝国ホテル」がレディースプランを販売し、しかも驚異の業績を上げたのですから、これほどの安心材料はなかったことでしょう。他のホテルも追随し、女性客にも評価され、やがて今日のようにスタンダード商品となったわけです。
それにしても、自分で書いた記事ながら、久しぶりに読み返して笑ってしまう箇所がありました。レディースプラン反対派のホテルの声を書いた部分です。
「性別を特定する必要はない」という意見は分かるのですが、「宿泊していただく理由までこちらが指示する必要はない」については、クリスマスプランはどう説明するのかな? と思わず突っ込みを入れてしまいました。さらには、「やらぬ節操を持ちたい」と語るホテルもあったんですよー。
しかし、反対派だったいずれのホテルも、ほどなくレディースプランを販売開始(笑)。現在も好評を得ています。この記事の最後に私は、「やらぬ節操があれば、やる節操だってある。要はポリシーの問題だ」と書いていますが、結論から言えばポリシーよりも顧客ニーズのほうが上回ったわけですね。
シティホテルの場合、現在も法人需要(もちろん今では女性も含まれます)のほうがレディースプランなどの個人需要よりも総売上高構成比率は数倍高いのが現状です。しかし、レディースプランの先駆けである帝国ホテルはつい先日のインタビューで次のように語ってくれました。
「法人需要を除いて考えれば、女性の個人消費はホテルを大きく左右する存在となっています。中でもレディースプランは一番重要な商品です」と。
当初はまだまだ色眼鏡で見られていたレディースプランですが、ホテル業界の考えも変わりましたし、利用者も見る目が肥え、利用スタイルも多様化してきました。出始めのころは、少なくとも2人以上で宿泊することが前提にあり、3〜4人での利用が普通の状態。1人プランなどありませんでした。
内容も、昨今のようなリラックスを目的とするよりもわいわい楽しもうといったノリで、中には牛、あひる、犬など着ぐるみパジャマを用意しているホテルもありましたっけ。
ほとんどのホテルが、閑散期対策としてやむを得ず打ち出していたような頃と比べ、現在は季節・曜日を問わず常時用意され、内容も洗練され、1人利用も当たり前になりました。
帝国ホテルでは、「1人利用のお客さまはレディースプラン利用者全体の約半数にも上る」そうです。1人の場合は、会社帰りと思われる午後6〜7時にチェックインする30〜40代の女性が多く、30分3500円(07年4月からは3675円)で受けられる客室出張マッサージがエステより人気なのだとか。何だかカッコいいですね。
ホテルに女性が泊まるからといって、何も「レディース」が付いたプランに泊まらなければいけないこともないですが、通常料金よりずっと安く、しかもアメニティや特典が充実しているのは紛れもない事実。
いまやどのホテルにでもあるレディースプランは「いつでも行けるもの」だけに、その安心感から意外と利用回数は少ないかもしれませんが、こうして市民権を経る過程を辿ってみると、新たな興味がわいてきませんか? よろしければこの機会に、10年が過ぎて成熟したレディースプランを利用してみてください。
1人で自由に過ごすのも素敵ですし、たまには友達と夜がふけるまで語り合うのもいいですよね。思いついた時に当日予約も可能なら、1〜2カ月前に予約しておけば当日までの期間、仕事の励みにもなって一石二鳥です。また、出張時の利用もいいものです。数々の特典は使い切れないと思いますが、アメニティがワンランク上のものだったり、客室がアップグレードされたり、朝食が付く程度のベーシックなプランなら価格も抑えられていますし、総合的にお得です。
女性のホテル利用をどのくらいホテル側が大事に思っているのか、そんな思いも汲み取れるはず。自分へのごほうびに多様なレディースプランを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。そしてさらにプランが充実するよう、もし何か意見があればホテルにしっかり残してきてくださいね。
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