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それいゆインタビュー

第2回 銀座くのや 八代目 菊地健容氏
銀座くのや 創業天保八年 銀座くのや 遊び心の伝統工房

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Interview 1 糸のように細く長いお付き合いを

石川: 企業が永く繁栄しつづけることが非常に難しいこの時代に、菊地社長のように170年の歴史を背負う老舗八代目は、私共には計り知れないような重圧もおありなんではないかと思いますが、いかがでしょうか?
菊地:八代目だから、という重圧はそれほどないです。銀座くのやには、たまたま時代を超えて永く続いているから長い目で見れば老舗になっているという考え方がベースにあって、老舗だからあえて何かを続けていこうと いう拘りはないのです。家訓ではありませんが、私の父である七代目もよく言っています。「その時代、その時代で、ビビットになれ 」とね。その時代に合ったことを続けていくことが大切で、その結果として長く続いているのが老舗というふうに捉えています。

石川:ご自身の代は、自分流のやり方で取り組んでいらっしゃるわけですね?
菊地:たとえば、江戸時代には洋服なんてなくて、みんなが着物を着ていたわけですから、商売の仕方が今とは全く違うわけです。明治は徐々に洋服が入ってきた時代。そして、銀座くのやに小売部門ができたのが大正時代。それぞれの時代で、その時代に合った商売をしてきた結果が今だと思っています。
石川:私の場合、和服を着る機会が全くと言っていいほどありません。現代において、和服やその小物類などを販売していくのは、難しい点もおありではないかと思うのですが?
菊地:着物を着る機会が減ったとはいえ、着物を着る人がいなくなってしまったわけではないので、難しいと思ったこともありません。常に良い商品を提供し続けていれば、お客様についてきていただけるものです。
石川:歌舞伎界を始め、古くからの贔屓のお客様がたくさんいらっしゃると伺っています。
菊地:呉服の商いをなさっている店が昔と比べて明らかに少ない分、いろいろなお客様がいら して下さいますし、次に何か欲しいというときに、またいらしていただける。そういう時代だからこそ、一人一人のお客様と糸のような細く長いお付き合いを、と心がけています。

石川:銀座くのやさんでは、今でも職人さんによる手作りのものを提供していらっしゃるそうですね?
菊地:ええ。代表的なもののひとつに「くのや足袋」があります。これは、300年以上の歴史を誇る“めうがや”さんという足袋屋さんを引き継いだものです。着物を着るとき は、最初に足袋から履くってご存知でしたか?足袋を履かなければ、着物は着ることができない。いわば着物の原点ともいえる足袋をとても大事に考えています。
石川:そういう想いから職人の技の継承にも努めていらっしゃるわけですね。
菊地:銀座くのやは元々、糸問屋として創業し、その延長で組紐や帯〆を作るようになりましたが、たとえば帯〆を作る職人も、何代にも渡って、銀座くのやの帯〆を作ってくれています。とかく職人技というと、テクニックとかハード的なことを考えがちですが、それ以上に大事なのはソフトの部分。職人との「阿吽の呼吸」が欠かせないのです。こちらがどんなものを望んでいるのかが職人に伝わる、また職人がどんな 想いで作ったのかが伝わってくる。技術的なこと云々よりも、もっと奥にあるお互いの信頼関係のほうが大切だと私は思っています。

石川:稲越功一氏の写真集『女たちの銀座』 の中に登場されていた根本光枝さんの記事を拝見し、私が生まれる前からずっと「銀座くのや」で働いていらして、今でも現役で活躍されているとは本当に素晴しいと思いました。同じように長く働いている方もたくさんいらっしゃるのでしょうか?
菊地:そうですね。根本もそうですが、六代目、七代目、八代目と三代に渡って勤め続けて くれている社員もいます。お客様のこともよくわかっているし、職人との付き合いや、銀座の街との付き合いも、よく心得てくれています。
石川:やはり女性が多いのですか?
菊地:女性が8割以上です。平均年齢は限りなく60歳に近いんじゃないかと思います 。仮に60歳の人だとすると、20歳過ぎから40年近く働いてくれていることになります。
石川:社員教育については、どのようにお考えですか?
菊地:私は厳しいですよ。かなり・・・。一番大事なのは礼儀ですよね。最近のお客様が望んでいるのは商品だけではなく、その売り方や言葉遣いも重要な要素のひとつですから。私はよく社員に、「くのや人たる前に銀座人たれ、銀座人たる前に社会人たれ」と言っています。つまり、全うな人間でなければいけないです。

石川:
売り方というお話が出ましたが、店舗の入口も2箇所に分けて入りやすく工夫していらっしゃるそうですね?
菊地:入りやすくするという目的もありますが、中央に店の顔を凝縮するという意味でショーウィンドウを置いています。ショーウィンドウの飾りつけは、プロに頼まずに全部社員がやっているんですよ。会社の顔は自分たちで作るべきですからね。
石川:私は、銀座という街には格式があって、他の街とは違う重みを感じています。菊地 社長は、銀座にどのような想いをお持ちですか?
菊地:銀座に対する思い入れは強いですね。屋号も「銀座くのや」となっていますし・・・。銀座には 「銀座○○」と いう屋号が多いでしょう?みんなそれだけ銀座に想い があるという ことなんだと思います。銀座には1丁目から8丁目まであって、それぞれに違った魅力があります。さらに朝昼晩とそれぞれ、 違う顔を見せてくれる。たとえば、夜の8丁目は日本で最も素敵な繁華街ですし、様々な魅力が混在しているところがいいんでしょうね。それと、銀座で商売をやっている人は、みんな自信を持ってやっていますね。
石川:その自信はどこから生まれるものなのでしょう?
菊地:ひとつは、本当に良いものを提供しているという自信でしょうね。もうひとつはお客様が厳しいこと。厳しいお客様が店を育ててくださっているんです。これはお客様と店との間に信頼関係がないと成り立たない。銀座のお店はお客様が育てている、そして銀座は来街者が育てている街だと思います。厳しいご指摘があるのは、期待して下さるからこそです。

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