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それいゆインタビュー

第2回 銀座くのや 八代目 菊地健容氏
銀座くのや 創業天保八年 銀座くのや 遊び心の伝統工房

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Interview 2 見えないところにおしゃれをする

石川:菊地社長は、お仲間とご一緒に「銀座和塾」という活動をなさっていますが、これはどういう理由で始められたのでしょうか?
菊地:日本人は意外と日本のことを深く知らないです。たとえば浮世絵のコレクションを持っているのは外国人の方が多かったり、日本文化について普通の日本人より外国人のほうが深い知識を持っていたりします。 たとえば海外旅行に行ったときに、向こうの方と「和」に関して深く掘り下げた会話ができない。別の言い方をすれば、日本人としてのアイデンティティ、自分らしさを表現できないのです。そういう中で、少しでも「和」の嗜みを身に付けてもらいたいと思って「銀座和塾」を始めました。
石川:いつ頃から始められたのでしょうか?
菊地:もう3年くらいになりますかね。毎月1回、広く浅く、様々な「和」に関するテーマを取り上げています。第一回目は「お香」でした。「四十の手習い」ということで、40歳以上の男性だけを対象としています。
石川:是非、それいゆの会員向けにも「和」に関するテーマで、日本の良さを知る機会をつくりたいです。ところで、菊地社長は、「和」の魅力は、どんなところにあるとお考えですか?
菊地:まずひとつは季節感を大切にするところでしょう。最近はすっかりなくなってしまいましたが・・・。
石川:事実、地球温暖化も影響して、四季がはっきりしなくなっていますね。その上、旬に関係なく、いつでも何でも食べられて季節感を楽しむ場面が減ってしまいました 。
菊地:季節ごとの行事もそうです。6月には夏の着物に衣替えしますよね。実は、私は夏の着物が一番好きなんです。なぜかというと、素材を色々と楽しめるし、柄とか合わせ方とか難しいだけに、おしゃれがおもしろくなるからです。たとえば麻製の足袋を履いたりする。しかも表は普通の白い生地で、裏地だけが麻でできた「麻裏」という足袋です。これこそ日本の美意識の表れだと思います。つまり見えないところにおしゃれをする、かつ、麻は通気性に優れているから気持ちがいい。ある人が言っていたことですが、夏の着物は着ている人が涼しいだけでなく、着ることによって周りの人を涼しくする効果があるのだそうです。そういう感覚って世界中で日本にしかないのではないでしょうか?そういう点も「和」の魅力のひとつで、大切にすべきことだと思います。

石川:おしゃれは自分のためだけでなく、周囲の人たちへの気遣いでもあるわけですね ?
菊地:あえて周りの人を涼しくさせましょうと意識するのではなく、自然にその姿を見ると、周りの人が涼しくなるということ、別の言い方をすれば、誰かに見せることがおしゃれの目的ではないということです。洋服は他人に見てもらう、自分を如何によく見せるかという、自己主張の側面がありますが、和服は「私が、私が・・・」ではなく、自然に「あの人が、あの人が・・・」と思わせる力を持っていると思います。
石川:自己主張よりも、「和」を 重んじている日本人の考え方が、着るものにも現れているわけですね。
菊地:「和」で使われている色は、草木を原料にした周りと馴染む色が多い。それに対して、西洋の色は鉱物を使ったものが多く、発色があって、外へ外へというイメージが強いです。たとえば、印象派の絵を思い出してみてください。近くから見ると何が書いてあるのか全くわかりませんが、遠くから離れて見てみるとわかりますよね。あれは重ね塗りの技術を使っているからです。つまり西洋の美意識は重ねる美しさを追求している。一方、日本の美意識は逆で、削いでいく美しさを求めています。たとえば俳句は、五・七・五の中にどうやって自分の感じている世界を閉じ込めるかが勝負。どうやって付加して大きく見せるかという西洋の考え方と正反対です。
石川:色だけでなく、様々な柄にも「和」の心が表れていると思うのですが?
菊池:そうですね。たとえば瓢箪が六つ描かれている風呂敷があるのですが、これは「六」っつの「瓢」たんで「六瓢(むびょう)」という音にかけて、無病息災を願う柄とされています。また、銀座くのやでは「七本原」という、七色を基調色としていろいろな小物を作っているのですが、これは正倉院御物経巻の紐の五色(古代紫、利休、錆朱、金茶、鉄紺)に金銀を加えた七色で、巻物に虫がつかないように守るというところから発した厄除けの意味があります。
石川:遊び心があったり、相手を大切に想う心が託されていたり、日本の文化は粋で、知れば知るほどおもしろいですね。

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